22歳のころ新オープンのデパート系SCに職を得た 事業部のボウリング場とレストランが建物の下部にぶら下がる形で併設されていて見晴らしは良かった 国道246を見下ろし堤通り方を見やると結婚式場の向うに兵庫島があり玉川が流れていた 足元の駅裏すぐに二子玉川遊園地があり小さな映画館で洋画を観てドア続きの園を散歩するのが好きだった 会社の隣駅ある小さな水路脇にあるアパート一室が社員寮になっておりコックの同僚と2名で住んでいた 年末ギリギリまで仕事をして帰宅すると悲しい事実が待っていた 仕事中は賄いがあり食事には事欠かないのだが休みとなると当時はコンビニもない、自販機もない、金もない おらこんな時はヤダ 東京さ行くだ..来てるか...

御飯を炊くがオカズもない 醤油でもかけて食おうということをするのだが間違ってソースをかけてしまったことがある あまりいけませんな そんなおり正月の2日だったか水路向うの別棟社員寮アパートにサブシェフのブッチャー渡辺が酒を持参して来るから来ないかとお呼びがかかった しかも2升下げて来ると言う そりゃ行くわな 

大家所有の農地の奥に在る建物の外付け階段を上がり2階の部屋に行くと石油ストーブが暖かくすでに炬燵に4名ほど陣取りコップと茶碗で一杯やっていた 無理無理サラダ場のニャロメと洗い場のケムンパスの横に後続二人ボクとシゲが割り込み駆けつけ一杯 丼に乾き物が盛ってあるが他につまみはない 

するとブッチャーが炬燵テーブル上に大型テープカッターをデンと置いた これも持って来たようだ
「みんな5センチずつテープを千切れ」「?」言う通りにすると小皿の醤油に浸けて糊側を舐めろと言う ちと甘みのある糊と醤油が絡み合いエモイワレヌ美味…じゃなかった
が糊分の味が無くなったら遠慮せず追加していいぞだって しないよと言いつつ2回おかわり おかしいのか悲しいのかわからん 酒は飲み進める

しばし後 ブッチャーは仕様がないなぁとニャリとしながら台所に立ち冷蔵庫から包みを出してきて「鍋でもやるか」肉である「さすがナベさん鍋さん、よ、ブッチャー」と言ったらコツンとやられた 他にいれる野菜がないんだというので閃いた 先程畑に白菜がたくさんあったのを横目で見ていたのだよ 大家は近くに住んでないし仕方がないのでお断りせず調達した 

大振りのを2株 土付きなので新人コックの、名を忘れたAに洗ってもらう さぁ白菜肉鍋だ ガス台で煮始めるとなんや泡立つ…Aが洗材で白菜をきれいにしたんだよ